kunirov’s diary

書きたいこと書いてます

サバ缶食べて工場見学したいと思った話。

今日も又、つまらぬ小話をひとつ。

 

 

鯖缶が流行っているんだろうか。

 

代表的な鯖缶といえば安定のマルハ月花シリーズが真っ先に思い浮かぶが、今回は違う商品にスポットを当ててみたい。

 

 

それはニッスイの「デンマーク産さば水煮」「同、オイル漬け」。発売されてもう一年くらいたっているんだが、今日、まいばすけっとで見つけたもんで。

 

外観は、淡い配色とシンプルな鯖のイラストを配した角缶。

 

従来、実写画像あるいはそれに類するものをドンと配置して鮮度アピールが主流だった魚類缶において、あえてのパッケージングは原料原産地がデンマークであるためか国産原料品との棲み分けを狙っているとも思える。

もちろん、おしゃれ感とおいしさが炸裂して大人気となった岩手缶詰製造の「Ça va(サヴァ)?缶」の影響も大きいだろうが、その点については同社の別製品で論じるのが妥当かと思う。

 

むしろこの製品は、とにかくシンプルな素材感を全面に押し出し、日常の調理素材として使われることを念頭に、新しいマーケット開拓に投じた実験商品だと僕は思う。その背景には「チョイ足し」やバリエーションTKGなどにみられる、既製品に自分好みのプラスアルファで生まれる味覚の楽しさに、消費者が気づいたということがあるだろう。

 

これまで魚類缶詰は、味噌煮、味付け、蒲焼きなど調理品として完成されたものだった。水煮や油漬けについても同じように、開缶したらすぐに食べられることを前提としていた。それは非常糧食の考え方であり、缶詰の本来的な価値と合致するために、ひとつの缶詰で世界が完成されていることは常識だったといえるだろう。 

 

ここで疑問が湧くかもしれない。味噌煮や蒲焼などとは違って、水煮、油漬けは見方を変えれば料理素材と言えなくもないだろうと。

 

しかし僕はあえてそれを否定する。

 

この商品をこれまでのサバ水煮缶と食べ比べてみれば一目瞭然、いや一味瞭然。

原料の下処理、加熱具合、ブライン液の浸透度(ようするに塩味具合)、どれをとっても従来のものとは方向性が異なっている。

 

缶詰の製造は、巻締めにより密封した缶を加圧加熱(つまりレトルト)により殺菌することで長期保存を可能とすることが一番の特徴だ。

魚類の小骨あるいは脊椎骨(サケの骨とか最高にうまいが。)を処理せずとも、いい具合のシャクシャク加減で美味しく頂けるようになる。つまりおさかな丸ごと食べられるという点を、長らく魚類缶詰の健康的メリットとしてアピールしていたように思う。

その一方で、一般的には加圧加熱により原料魚の身は締まる傾向にある。食感がパサつく原因だ。

 

ところが。

この「デンマーク産さば水煮」は、その身のしっとり感と薄い塩味ながらもしっかりとブライン液が浸透し、魚のうまみを引き出していることに驚いた。さらに小骨が無い。缶詰だから骨くらいあってもいいのだが、驚くほど小骨がない。そして何より一番、従来のサバ水煮缶との違いを感じたのは、魚特有の臭みがほとんどないことだった。

身そのものに臭みがないだけでなく、ブライン液にも臭みがなく、開缶後の缶にもほとんど魚の臭みが残っていなかった。

 

これは大変なものを作り出したなニッスイ!と思ったものだ。

 

いまやどの缶詰製造ラインでも新鮮な原料を使うことは絶対条件だが、それでも臭みは出てしまう。いや、出てしまっている。しかしこの商品を前にすると、どれほど新鮮な状態で下処理を行い、迅速にレトルト加工に入ったのか、ちょっと想像がつかない。ぜひとも製造工程を見学したいものだ。

 

調理する人の立場に立てば、味付けに極力干渉しない食材のほうが扱いやすい。これは自明の理である。

 

従来品の塩味の強さや身のパサつき、骨の存在は素材にするにはマイナス要素と考えられるが、実はそれほど大きな問題でもない。工夫のしようはあるからだ。ならばなにが問題なのか。

そう、「臭み」だ。

こればかりは味付けではなかなかごまかせないことを調理者はよく知っている。それこそカレーのように香辛料漬けにしてしまうなら話は別だが。

開缶したときに瞬時にわかるレベルの臭みの無さこそが、素材缶詰としての確固たる方向性を感じさせるのだ。

 

臭みがないからこそ、小骨が無いレベルで抜き取り下処理されていることや、調理を想定内とした味付けが価値をもつ。

 

そんな調理素材向けサバ缶がおひとつ250円。

 

その価値に見合うだけの価格設定だと消費者が納得できるかどうかが課題だ。

長らく原料の高騰と店頭での低価格状態に苦しみ続ける水産缶詰界隈だが、新しい市場開拓が奏功して光明となるか、今後の動向が期待されよう。

 

いや~それにしても本当、工場見学したいわ、これ。