kunirov’s diary

書きたいこと書いてます

二十歳の門出

今週のお題「二十歳」

 

今年も成人式が全国各所で執り行われて、そこに参加しようがしまいが新成人として「オトナ」認定される男子女子がたくさんいるのだろう。オトナってなんだろう?とかいう疑問はさておき、自分が二十歳を迎えたときはどうだったか。大人になった実感なんてこれっぽっちもなかった気がする。ただなぜか羽織袴姿に妙な思い入れがあって、成人式には衣装を借りて参加したことを覚えている。

 

今思えば、足元がスースーして寒いし、着崩れたら自分で直せないし、慣れない草履は足に合わず鼻緒が痛いし、いいことなんてひとつもなかった気がする。なぜ羽織袴を着たかったのか分からないけど、当時はそういう気分だったんでしょうなぁ。

 

さて成人式はというと、式典会場には入りきれずにロビーまで人が埋め尽くされ、おそらくいろんな来賓の方々の祝辞などがあったのだろうが、わいわいがやがやで何も聞こえなかった。

式典が終わると何か記念品をもらって会場を後にした、と思うんだけどもそれが何も覚えてない。それほどの感慨もなく成人式は終わった、味気ない思いでしかない。

 

ただこういう時にはつらつと輝く奴もいた。一生懸命に人込みをかき分けて中学時代の同級生を探し出し、式典のあとに開催する成人パーティに招待してくれる幹事役だった。

 

成人パーティには帰宅してから着替えて出席したと思う。みんな懐かしい顔ぶれだった。「大人になった証=酒が飲める」という、特別なことでもなんでもないことを殊更に祝い、乾杯した。たかだか数年前のことを懐かしがり、あれからいろいろあったような話しぶりで、一丁前の社交ぶりを皆が発揮していた。飲みなれたビールやカクテルのグラスを開け、慣れた手つきでタバコをくゆらせたその姿は、新橋や新宿の繁華街にいる大人たちと何ら変わることはなかった。

 

パーティの終わりに再会とそれぞれの健闘を祈り、三々五々に別れて行った。僕らは僕らのグループで二次会を開いた。懐かしの面々というよりは、そのころまだ付き合いが続いていたので日常的に顔を合わせることの多い友人らで飲みに行った。

 

その店はいまは別の業態に変わっているが、特徴的な窓がそのままなので、いまでも近くを通るとそのことは思い出す。でも何を話していたのか、全然覚えてない。たぶん芝居のこととかキャンプのこととか、あとは思い出話。

 

このさき十年、二十年と続く人生についてなんか何も考えてなかったし、想像もできなかった。自分が「オトナ」になるのはいつのことなのか。成人式を終えてもなお実感は湧かなかったことを覚えている。そしてそれを僕はいまだに探し求めている。